光市母子殺害事件の判決要旨
山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審で、広島高裁が22日、言い渡した判決の要旨は次の通り。

【新供述の信用性】

元少年はほぼ一貫して起訴事実を認めていたが(最高裁が差し戻して以降)供述を一変させた。当裁判所は、新供述の信用性を判断するため証人尋問も行った。

旧供述を翻して新供述をした理由に関する元少年の供述は不自然、不合理である。新供述と旧供述とは、事実経過や殺害行為の態様、殺意や乱暴の犯意の有無などが全く異なっている。

公訴提起されてから(最高裁判決前に選任された)安田好弘弁護士らが弁護人に選任されるまでの6年半以上もの間、それまでの弁護人に対し、新供述のような話を1回もしたことがないというのは、あまりにも不自然。初めて接見した安田弁護士らから事件のことを話すよう言われて、新供述を始めたのも不自然だが、元少年は納得できる説明をしていない。

【弥生さん殺害】

元少年は弥生さんの首を両手で絞めたことはないと供述しており、逆手にした右手だけで弥生さんの首を圧迫して死亡させたことになるが、弥生さんの死体所見と整合しない。

元少年の新供述は右逆手による殺害状況について合理的な理由なく変遷しており、不自然だ。供述の変遷が生じた理由について元少年の説明は到底納得がいくとは言い難い。

元少年は差し戻し控訴審で、弥生さんが生き返ってほしいという思いで乱暴したと供述したが、一連の行為をみる限り性欲を満たすためと推認するのが合理的。

死亡した女性が乱暴して生き返ること自体、荒唐無稽(むけい)な発想で、元少年が実際にこのようなことを思い付いたか甚だ疑わしい。供述は到底信用できない。

弥生さんを通して実母を見て、甘えたい気持ちから抱きついたとの供述も、一連の行為とはあまりにもかけ離れており不自然。

元少年は1審で、乱暴してでも性行為をしたいと考えたことを認めた。供述を強制されない法廷で任意にした供述は、高度の信用性が認められるべきだ。乱暴に計画性があったことは動かし難い事実だ。

【夕夏ちゃん殺害】

元少年は夕夏ちゃんを床にたたきつけたことはないと供述するが、少年審判や1審でも認めており、床にたたきつけたとするのが合理的。

元少年は夕夏ちゃんの首を絞めたという認識はないと言うが、元少年が首にひもを二重に巻いた上、ちょう結びにしたことは証拠上、明らかで、その記憶が欠落しているという供述は、不合理である。

【窃盗】

元少年はテープと勘違いして財布を持ち出したと供述するが、形状などが全く異なっており、新供述は信用できず、1審判決が認定した事実に誤認はない。

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