本村洋さん会見詳細
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−−被告は傍聴席に一礼しましたが、どう感じましたか。

本村 最後に彼が一礼してくれたことは見届けました。彼がどういった心境で頭を下げたのか、まだ分かりません。ただ、判決文をしっかりと読んで、心から謝罪ができる日が来るよう願っています。

−−被告の反省文は本村さんは開封はされるのでしょうか。

本村 いいえ。開封は生涯しないと思います。今回の裁判所の見解であったように、明らかに自らの罪を逃れたいがために書いた反省文であると思いますし、あれは彼の本当の気持ちが書かれていない可能性が高いと思っています。ですから判決以降に書かれた手紙であるなら読む準備があると思いますけれど、それ以前に書かれた手紙は生涯開封しないと思います。

−−彼にかける言葉は。

本村 胸を張って彼には死刑を受け入れてもらいたい。胸を張れるまでには相当苦悩を重ね、自らの死を乗り越えて反省しなければいけないと思う。そうした境地に達して自らの命をもって堂々と罪を償ってほしいと思う。できればそういった姿を私たち社会が知れるような死刑制度であってもらいたいと思います。

−−今回の少年は(犯行時)18歳。ハードルが外れ、今後、少年の死刑判決が続くと思いますか。

本村 そもそも、死刑に対するハードルと考えることがおかしい。日本の法律は1人でも人を殺めたら死刑を科すことができる。それは法律じゃない、勝手に作った司法の慣例です。

今回、最も尊うべきは、過去の判例にとらわれず、個別の事案をきちんと審査して、それが死刑に値するかどうかということを的確に判断したことです。今までの裁判であれば、18歳と30日、死者は2名、無期で決まり、それに合わせて判決文を書いていくのが当たり前だったと思います。そこを今回、乗り越えたことが非常に重要でありますし、裁判員制度の前にこういった画期的な判例が出たことが重要だと思いますし、もっと言えば過去の判例にとらわれず、それぞれ個別の事案を審査し、その世情に合った判決を出す風土が生まれることを切望します。

−−日本の司法に与えた影響については。

本村 私は事件に遭うまでは六法全書も開いたことがない人間でした。それがこういった事件に巻き込まれて、裁判というものに深く関わることになりました。私が裁判に関わった当初は刑事司法において、被害者の地位や権利はまったくありませんでした。それが、この9年間で意見陳述権が認められましたし、優先傍聴権も認められる。例えば今回のように4000人も傍聴に訪れたら、遺族は絶対傍聴できなかった。それが優先傍聴権があるために私たち遺族は全員傍聴できた。これからは被害者参加制度ができて被害者は当事者として刑事裁判の中に入ることができる。

そういったことで司法は大きく変わっていると思いますし、これから裁判員制度をにらんで司法が国家試験、司法試験を通った方だけではなく、被害者も加害者も、そして一般の方も参加して、社会の問題を自ら解決するという民主主義の機運が高まる方向に向かっていると思います。実際に裁判に関わって、まったく被害者の権利を認めていない時代から、意見陳述が認められて、傍聴席も確保できて、そういった過渡期に裁判を迎えられたことは意義深いと思ってます。

−−今の裁判の問題点は。

本村 すべての問題が解決したわけではありませんし、例えば今回、9年という歳月がかかっている。これは非常に長いと思います。ですから今後、裁判の迅速化とか今後検証していく余地はたくさんあると思う。法は常に未完だと思います。未完だと思って常により良い方向を目指して解決していくべきだと思います。

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