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秋葉原殺傷 第16回公判
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《東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた加藤智大(ともひろ)被告(27)への弁護人質問が続く。加藤被告が青森市内の運送会社で働いていた当時、はまっていた掲示板について、男性弁護人が利用状況を尋ねると、加藤被告の口からはネット用語が次々と飛び出す》

被告「掲示板では『レス禁』(書き込み禁止)になり、書き込みができなくなりました」

弁護人「どうして書き込みができなくなったのですか」

被告「私の書き込んだことが『荒らし』(悪質な書き込み)と判断されたからです」

弁護人「『レス禁』について説明してください」

被告「掲示板の管理人が書き込みをした携帯電話を特定して、書き込みができないようにすることです」

弁護人「この掲示板がレス禁になり、どうしたのですか」

被告「別の掲示板に引っ越しました。(利用する)人は少なかったですが、雑談したり、ネタ(の書き込み)があったりしました」

《加藤被告の「引っ越す」という表現からはネットへの依存度がうかがえる》

弁護人「その掲示板への書き込みはいつごろからですか」

被告「平成19年…、もとい、18年10月ころからだったと思います」

弁護人「その掲示板には書き込みのテーマがあるのですか」

被告「特にありません。何でもありでした」

弁護人「ハンドルネーム(掲示板上の名前)は付けましたか」

被告「設定しました。ほかの掲示板の住人(利用者)からハンドルネームを付けるように言われていました」

弁護人「なぜですか」

被告「ハンドルネームがなければ、『名無し』と呼ばれます。ハンドルネームがあれば、特定されます」

弁護人「掲示板をどのように利用しましたか」

被告「自虐ネタを書いたり、面白いニュースを見つけて書き込みました」

《以前はゲームに関する情報収集、雑談目的で書き込みをしていたとする加藤被告。弁護人は、このころから書き込みの性質が変わってきたことを指摘する》

弁護人「利用の仕方が変わってきたのですか」

被告「はい。面白いことを書いて、レス(返事の書き込み)をもらいたかったです。本音でネタを書き込んでいました」

弁護人「本音とは?」

被告「建前に対しての本音。人のことを意識することなく、『これを書いたら嫌われてしまう』などということを考えず、書きたいことを書きます」

弁護人「建前とは?」

被告「逆に相手を傷つけないように、きれいごとを並べることが建前です。ただ本音は本心ではないです」

弁護人「説明してください」

被告「(書き込んだ)文字の内容が、そのまま考えていることだと思われると困るということです」

《加藤被告の分かりにくい説明に、法廷内には困惑が広がる。弁護人は質問を続ける》

弁護人「『本音のネタ』の意味について説明してください」

被告「一言でいえば、冗談。実話を元にしたもの、脚色したもの、まったくの作り話もネタになります」

弁護人「何を期待してネタを書いたのですか」

被告「ウケを狙っていました」

弁護人「何を期待してウケを狙ったのですか」

被告「ウケた人からの返事を期待しました。返事をもらえると嬉しく、『1人じゃない』と感じられました。掲示板は私にとって、居場所。1人じゃないと感じられたんです」

弁護人「ほかの人が自分のことをどう思っていたと思いますか」

被告「『おもしろいやつ』と返信を返してくれていると思いました。掲示板上での人間関係が大切でした」

弁護人「どのような人間関係でしたか」

被告「私にとっては家族のような…、家族同然の人間関係でした」

《地元の青森で働きながらも、ネット掲示板にのめり込む加藤被告》

弁護人「地元には高校時代の友達もいましたよね? 現実世界に居場所をなくして、掲示板にのめりこんだのですか」

被告「そういうわけではありません。現実にも親しい人間はいました」

弁護人「書き込んだものを見ながら、説明をしてください」

《弁護人は掲示板を印刷した紙を持ちながら、加藤被告に近づく。加藤被告の横に立ち、紙を示しながら質問を始める。加藤被告は証言台のマイクが邪魔で紙が見えにくかったらしく、マイクの位置をずらした》

《村山浩昭裁判長や検察側、弁護側はそれぞれの卓上に置かれたモニターで紙を確認する。傍聴席から見える大型モニターには映し出されず、どのような書き込みがされているのかは分からない》

弁護人「これは2006(平成18)年12月のクリスマスイブに書き込みましたね」

被告「はい」

弁護人「『宝くじが当たった』『ホテルを予約する』と書いていますが、見た人はどう思うと考えていましたか」

被告「分かる人が見れば分かるネタです。私は『不細工で彼女がいない』という自虐的な書き込みをしてきました。だから(クリスマスイブの書き込みも)ネタだと分かります」

弁護人「『ホストクラブで自爆テロ』と書いてあります。実際に自爆テロを考えていたのですか」

被告「そういうことはありません」

《加藤被告はさらに弁護人に質問される形で、実際に書き込んだ文章の趣旨を説明していく》

被告「ゲームセンターで順番待ちをしている人がいるのに、ゲーム機に座り続ける人のお尻から、財布を抜いていいですか」

「ゲームセンターで楽しんでいるカップルに乱入していいですか」

「ゲームセンターの音楽ゲームで(リズムに合わせて)ボタンを押している人の横で、同じ音楽をかけて嫌がらせをしていいですか」

「ゲームセンターでゲームをしないのにイスに座っている人間をポア、オウム真理教の事件で使われていた言葉ですが、殺していいですか」

《加藤被告はときおり鼻付近を触りながら、掲示板閲覧者の笑いを取るために書いたとされる文章の意味を説明する。当然のことながら、傍聴人の間では笑いは起きない。女性の裁判官は赤色っぽいハンカチのような布で口元を押さえながら、加藤被告を見つめていた》

法廷ライブ14に続く

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