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秋葉原殺傷 第16回公判
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《女性弁護人の質問が続く。幼少期の親に対する思い出について、落ち着いた口調で答える加藤智大(ともひろ)被告(27)。背筋を伸ばしてじっと裁判官席に視線を向けている》

弁護人「嫌なことばかりが記憶に残っているのですか。お父さんとのいい思い出とかはありますか」

被告「アパートの駐車場でおもちゃの車に乗って一緒に遊んでいました」

弁護人「お父さんとは遊んでもらっていたのですか。いい感情を持っていたのですか」

被告「小学生くらいからは何も聞かずに母親と一緒になって怒るようになり、(父親への感情も)変わってしまいました」

弁護人「だんだんとお父さんへの感情も変わってしまったのですか。ほかに遊んでもらったことは?」

被告「車のラジコンで遊んでもらった記憶もあります」

弁護人「自宅が新築になってからは、残っている記憶とかはありますか」

被告「一緒に遊んでもらった大工さんに対してあこがれの気持ちを持つようになりました。大工さんになりたいと母親に伝えたら怒られました」

弁護人「大工さんと一緒に遊んでもらって、あこがれを持つようになったのですか。お母さんはどう言いましたか」

被告「『何でそんなものになりたいの』と言いました」

弁護人「その言葉の意味は分かりましたか」

被告「いえ。分かりませんでした」

弁護人「お母さんに対してはどうして大工さんはだめなのか聞かなかったのですか」

被告「聞きませんでした。そうしたことを言える環境じゃなかったです」

弁護人「どうしてですか」

被告「抵抗したりすると怒られてしまうと思いました。母親の意に沿わないことをするとさらに怒られます」

弁護人「何か具体的なエピソードはありますか」

《加藤被告の口調が少し早くなる》

被告「母親から何かするように言われて、それをうまくできなかったら10を数えるうちにやりなさいと言われました」

弁護人「できなかったらどうなるのですか」

被告「何らかの罰を与えられるのです」

弁護人「それで抵抗することをやめたのですか」

被告「そうです」

弁護人「大工さんのほかに夢はありましたか」

被告「レーサーになりたいと考えました」

弁護人「F1レーサーのようなものですか。お母さんに話すとどう言われましたか」

被告「そんなものになるべきじゃないと一蹴(いっしゅう)されました」

弁護人「どう思いましたか」

被告「悲しかったです」

弁護人「転校してからお母さんとの間で残っている記憶はありますか」

《加藤被告の発言と呼吸を合わせるように質問を続ける弁護人》

被告「お風呂で九九を教えてもらいました。湯船に入っている間に暗唱しなさいと言われました」

弁護人「お母さんも一緒にお風呂に入っていたのですか。嫌な記憶はありますか」

被告「間違えるとお風呂に沈められました。頭を押さえつけられて沈められました」

弁護人「どんな気持ちでしたか」

被告「大人しく沈められていました」

弁護人「沈められているときにどんな言葉をかけられていましたか」

被告「笑われていました」

弁護人「お母さんはふざけて沈めていたのでしょうか」

被告「苦しくなるまで沈められていたので、ふざけていたということはないです」

弁護人「もう一緒にお風呂に入りたくないとお母さんに言わなかったのですか」

被告「ありませんでした。結局はやらされるからです」

《時折、視線を書類に落としながらも、村山浩昭裁判長が目を合わせるように加藤被告の表情をじっと見つめる》

弁護人「ほかにどんな怒られ方をしましたか。泣いてしまったことはありますか」

被告「よく泣いていました。でも泣くことでお母さんに怒られる材料になりました」

弁護人「どんなことがありましたか」

被告「口にタオルを詰められてその上からガムテープを張られたことがあります」

弁護人「黙れという意味ですか」

被告「たぶんそうだと思います」

《機器の不調からか村山裁判長が発言のやりとりにストップをかける。書記官が裁判官席の前を行き来して、30秒ほど中断した》

弁護人「ほかにはありますか」

被告「私が泣くたびに母親がスタンプカードをつくりました」

弁護人「スタンプカードとはどういったものですか?」

被告「押すところが10個あって、スタンプが10個たまると罰を与えられました」

《弁護人の質問にすべて即答で答える加藤被告》

弁護人「罰とは何ですか」

被告「いろいろありましたが、屋根裏部屋に閉じこめられることがありました」

弁護人「屋根裏部屋はどんな所でしたか」

被告「サウナのようなひどい所でした」

法廷ライブ5に続く

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