竹島周辺の海洋調査 歴代政権、ツケ重く「東海」問題、再燃懸念

韓国側が六月の国際会議で竹島周辺海域の韓国名表記の提案を見送らない限り、日本政府は、予定通り竹島付近を含む排他的経済水域(EEZ)の海洋測量調査を進める方針だ。韓国側はすでに詳細な調査を終了。海底地形に韓国名が付けば、韓国による竹島の不法占拠にお墨付きを与えることになる。さらに「日本海」を「東海」に呼称変更するよう求める韓国側の主張を勢いづけかねない。摩擦を避けてきた戦後歴代政権のツケが重くのしかかる。

「わが国のEEZ内で科学的調査を行うことは国際法上問題ない。どの国も行っていることだ。粛々と進めていく」

安倍晋三官房長官は十九日の記者会見でこう述べ、韓国側に「お互い冷静に対処することが大切だ」と呼びかけた。

この日、谷内正太郎外務事務次官は韓国の羅鍾一駐日大使に対し、六月にドイツで開かれる国際会議「海底地形名称小委員会」で、韓国が竹島周辺海域の韓国名表記を提案しようとしていることを指摘。その上で、海保測量船による海洋調査について「日本も対案提出を念頭に必要なデータ収集のため調査を実施する」と説明したという。

韓国側は過去四年間で四回も海洋測量調査を実施。事前通告もなく日本のEEZ内でも調査を行ってきた。沿岸国の同意なしのEEZ内調査は国連海洋法条約違反で日本政府は抗議したが、無視されてきた。これに対し、日本側は過去約三十年間竹島周辺の海域調査を一度も行っていない。

韓国側が「海底地形名称小委員会」で、日本側EEZ内にまで韓国名の海底地形名称を提案しようとしていることを昨年十一月ごろ知り、「今年に入り、慌てて海洋調査の実施を決定した」(政府筋)という。

今回予定されている日本側の調査対象海域は、日本が主張するEEZ内に限られている。

日本側が最も恐れるのは、韓国による竹島の不法占拠が国際社会で既成事実になることだ。「海底地形図が韓国名ばかりになれば、竹島は韓国領で、周辺は韓国のEEZだということになってしまう」(政府筋)というわけだ。

加えて「日本海」呼称問題も再燃する懸念すらある。韓国側が平成十四年、日本海の呼称を「東海」にすべきだと主張し、国際水路機関(IHO)作成の指針「大洋と海の境界」の改訂の際、一時的に「日本海」が削除されたことがあった。今も韓国はあきらめておらず、海底地形の名称はその足がかりとされる可能性もある。

韓国は五月末に統一地方選を控え、盧武鉉政権が支持率浮揚に反日キャンペーンを仕掛けたとの見方もある。外務省幹部は「『けしからん』と言いつつ、内心は日本側が竹島カードを切ってくれて『よくやった』と喜んでいるのではないか」と皮肉を込めた。

自民党内からは「非常識にもほどがある。竹島を不法占拠した一九五二年の李承晩ラインに続いて、盧武鉉ラインを新たにつくるつもりか」(中堅)という憤りの声も上がっている。