不倫の末にひき逃げ殺人
大阪府東大阪市で4月、派遣社員の男性が三角関係のもつれからイタリア車のアルファロメオでひき逃げを装って殺害された事件は、男性の内妻と、新たな交際相手の男が大阪府警に殺人容疑で逮捕された。内妻は事故当時、涙ながらに「犯人を許せない気持ちでいっぱい」と語り、突然の悲報にうちひしがれる「遺族」を演じていた。
被害者の江頭一貴さん=当時(36)=と内縁関係にあった樋口亜意子容疑者(34)は樋口容疑者宅で同居していた。ひき逃げされた日の朝も樋口容疑者宅から職場に出勤した。2人の間には生後9カ月の女児もいた。その裏で樋口容疑者は新たな交際相手として五十川(いそがわ)拓海容疑者(40)と親密な関係を築いていた。2人は昨年9月から、江頭さんの殺害計画を練っていたという。
大阪府警によると、事件は4月13日午前8時25分ごろ、東大阪市菱江の市道で起きた。道路の右側を歩いていた江頭さんの後ろからアルファロメオで近づいた五十川容疑者は、反対車線にはみ出してはねたという。江頭さんは衝突のはずみで20メートル以上も飛ばされ頭の骨を折った。ほぼ即死だったという。そのころ、樋口容疑者は赤ちゃんと現場近くの自宅にいた。
2日後、樋口容疑者宅を訪れて取材した。樋口容疑者は、「今でも亡くなったという実感がわいていない。犯人に対しては許せない気持ちでいっぱいです」と涙を流して江頭さんをしのんでみせた。
さらに、「食べることがとても好きな人でした。私の料理を何でもおいしい、おいしいと食べてくれた。事故の日は食パンを食べて、子供とじゃれあって出かけていった」とも語った。
また、「彼とは5年くらい前に前の夫と離婚した後、家電量販店で出会って同棲するようになったんです。理由があって入籍はしていませんが大切な人でした」と話す姿は、愛しい人を亡くした心を反映しているかのように思えたが、だまされていた。
捜査関係者によると、3人は顔見知りだった。江頭さんがかつて店長を務めていた大阪市都島区のコンビニ(現在は閉店)で、樋口容疑者は副店長をしていた。そこに見習い店員として働き始めたのが五十川容疑者だった。閉店をめぐって江頭さんと樋口容疑者が口論になった際、五十川容疑者が相談に乗ったのが三角関係の始まり。江頭さんと五十川容疑者の関係は悪化した。
五十川容疑者は昨年7月、「交際相手の女性が内縁の夫から暴力をふるわれている。私と連絡を取らせないよう四六時中監視し、携帯電話も取り上げてしまった」と府警に申告。江頭さんも昨年8月、府警に「(五十川容疑者から)内縁の妻に『江頭と別れろ、さもなくば江頭を殺す』といったメールが届いた。たちの悪い男で暴力団関係者ともつながりがあるようだ」と相談した。
泥沼の三角関係のもつれが事件に発展することを防ぐため府警は9月、3人を呼び出し、互いにトラブルを避けるように行動することを約束させた。
捜査関係者によると、その席上、樋口容疑者は自分を巡って言い争う2人の男の姿を見て満足だったのだろうか、さばさばしたとした表情でやりとりを聞いていたという。
(産経新聞)
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