プルトニウムは 表1 に示すように、普通の意味で(化学的毒性から見れば)青酸カリや食中毒などに比べて、一般の重金属並みの毒性で特別に高いものでない。しかしながら、放射性的には毒性があると言ってもよい。それはアルファ放射体で比放射能が高いことにある。プルトニウムは放射性毒性が化学的毒性よりも数万倍も上回るとされている。
ところで、アルファ放射線は紙一枚で遮ることができ、皮膚を通すことができないので、その放射線により障害を起こさせるにはプルトニウムを体内に摂取することによる。皮膚に付いたプルトニウムは容易に吸収されるものでなく、水などで洗い流すことができる。言い換えると、プルトニウムは万一体内に摂取された場合に高い毒性を示すことになる。
プルトニウムは通常固体(粉末、ペレット)や液体で取り扱われ、気体にはならない。しかし、極微量エアロゾルやミストとして、人体に摂取される可能性がある。経口摂取による場合はプルトニウムが通常不溶解性であり、消化管からの吸収は非常に悪く、ほとんどが排泄されてしまう。一方、吸入摂取の場合はかなりの時間肺や骨に留まり、その附近の組織細胞がアルファ線で照射され、すぐにどういうことはないものの晩発効果として、時としてガンの発生があり得ることになる。
現在までに得られている動物実験などの結果から、次のようなことが明らかになっている。プルトニウムの人体への影響は飲食物を介する摂取(経口摂取)か空気の吸入による摂取(吸入摂取)かによって大きく異なる。
経口摂取の場合は消化管からの吸収が非常に少ない(0.1〜0.001%)ため、ほとんどが排泄されて影響は小さい。
吸入摂取の場合は、数十日から数百日の生物学的半減期で肺から出て、その一部は血液を介して主として骨と肝臓に移行する。骨からは生物学的半減期50年、肝臓からは20年で排泄されると言われている。したがって、プルトニウムの体内被ばくによる影響は、肺、骨及び肝臓における晩発障害である発ガンである。