米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に掲載された論文では犬およびウィリアムズ症候群の人々にみられる極端な社交性に関連した2種類の遺伝子の変異が指摘された。
今回の発見は、犬が数千年前にオオカミの祖先から枝分かれして家畜化した経緯についての新たな考察を示している。
研究では、飼い犬18匹と捕獲したハイイロオオカミ10匹を対象に、課題解決能力や人間に対する社交性について調べた。箱のふたを持ち上げてソーセージのおやつを取り出す課題では、同じ部屋にいる人に対しどの程度助けを求めるかで評価した。
その結果、オオカミは犬よりもおやつを取り出す方法を見つけ出せる場合が多く、また犬は近くにいる人を恨めしそうに見つめていることが多かった。
続いて研究チームは、オオカミと犬の血液を採取して分析。その結果、犬のGTF2IとGTF2IRD1という2つの遺伝子に変異があることが判明した。「(これらの変異は)犬の極端な社交性に関連するとみられ、このことが犬とオオカミを隔てた家畜化の主要因となった」と論文は述べている。
これらの遺伝子はこれまで、ウィリアムズ症候群の人々の極端な社交性との関連性が指摘されていた。ただ、変異そのものについては、人のそれとはちがっていた。
ウィリアムズ症候群(ウィリアムズしょうこうぐん, Williams syndrome, WS) ウィリアムズ・ボイレン症候群(Williams-Beuren syndrome, WBS)とは、まれな遺伝子疾患であり、神経発達症に区分される。症状には知能低下などの精神遅滞、心臓疾患などがあり、独特の顔つき("エルフのような"(Elfin)顔つきと言われる)を示す。
1961年に医師J.C.P.ウィリアムズ(英語版)により報告された。原因は既に同定されており、7番染色体上の遺伝子欠失である。
知能低下に比べて言語は比較的良好に発達することが知られており、知らない人にも陽気に多弁に話しかける。重い自閉症の正反対のようである。ある意味で、ウィリアムズ症は「病的に音楽好きな人々」と称される[4]。
有病率は7,500-20,000出生あたり1人ほど。治療法は存在していない。