婚外セックス・レイプ
一般的なシャリーアの解釈では、同意の上での婚外セックスを犯した男女は、既婚者の場合投石による死刑、未婚者の場合100回の鞭打ちである。またレイプに対しては、加害者は(既婚者であれば)投石刑に処される。
上に挙げたように、同意の上での婚外セックスに対する刑罰に関して、シャリーアの規定そのものでは、男女平等である。しかし、カーディーの酌量の際の操作により、現実には下に述べるような刑罰の大きな格差が生まれる。またレイプに関しても、規定そのものに従えば加害者に死刑を与えるが、実際にはレイプの証明の際にムスリム男性4人の証言が必要とされ、それを得られない場合、その女性は姦通を犯し、あまつさえそれを男になすり付けたとして逆に姦通罪や中傷罪により(既婚者であれば)投石刑で処刑される。なお、イスラーム法では、夫婦間におけるレイプを犯罪としない。
婚外セックス
前近代・現代を問わずイスラーム世界において婚外セックスへの風当たりは強い。シャリーアにのっとった処罰を公式に定めている国は、イランやアラビア半島の諸国、ソマリアの各地方自治政権等があげられるが、シャリーアに則った処罰ではなくとも、何らかの刑罰が存在する国も少なくない。
上に挙げたとおり、同意の上での婚外セックスへの刑罰は、シャリーアの規定上は男女平等であるが、実際はこのような場合、男性の側は『女が誘惑した』と言い逃れをするのが常道であり、司法部もかなりの事例においてこれを認めるので、男女ともに死刑になるべき事例であっても、実際は男性の側は酌量により鞭打ち100回、女性のみ死刑となることが少なくない。
シャリーアに則った処罰は、それ自体として残虐であり人権と倫理を無視しているとして、国際社会からの強い非難を浴びている。
それに加え、上記にあげたレイプ被害者に対して求められるイスラーム教徒男性4人の証人の確保も現実の男性中心的な社会では難しく、意を決して性的被害を訴えても、同意の上での婚外セックスであるにもかかわらず、男性を落としいれようとしたとして、逆に姦通罪や偽証罪に問われ投石刑で処刑される事例が少なくない。ソマリアでは2008年の10月27日に、キスマヨを実効支配するイスラーム武装組織の兵士によって強姦されたと訴えた女性が、逆に姦通罪に問われ、投石刑により処刑された。女性は当初23歳とされていたが、後の詳しい調査で13歳であることが判明した。
またこの場合、上の同意の上での婚外セックスにおける酌量の男女差も加味され、本来ならば加害者男性が処刑されるところを、被害者女性のみが処刑され、加害者男性は鞭打ち100回ですむことも少なくない。例として、イランでは2004年に強姦被害者である未婚の16歳女性が「姦通罪」としてクレーン車で体を吊り上げる方法で絞首刑に処されている。さらに18歳未満では死刑とする事が難しい為か、「22歳」という設定で裁判にかけられた。ちなみにこの事件の「強姦加害者」である51歳の男性に課せられた刑は96回の鞭打ちのみであったという。
また国法での罰則とは別に、未婚者の女性の婚外セックスは、同意・レイプ問わず、家族の名誉を穢した汚らわしい行為として見られ、私刑として殺されてしまう事例が少なくない。これはイスラーム世界の全土に見られ、トルコの東部やイラクなどでも行われているが、特に多いのはパキスタンの山間部であるとされる。これはパキスタンの山間部は国法よりも部族の慣習法がより強い効力を有するためであるとされている。