ゴキブリの天敵について聞いてみると、佐藤さんから意外な答えが返ってきた。
「ゴキブリは、人間や犬、猫などがあまり寄りつかない場所に生息します。特に人間は、自分の敵になるものなので最も嫌います。ネズミが繁殖している店舗などでも、ゴキブリが表だって繁殖することはありません。逆に、何年も人が住んでいない家屋などは、クロゴキブリが繁殖していることが多いです。食べ物がなくても、畳や紙が湿気を帯びていますし、雨水などの水滴を含めあらゆる物を餌にして住みつきます。古い日本家屋などでは、キッチンの下や畳の下、鴨居の隙間などに大量に生息していることもあります」(佐藤さん)
執拗にゴキブリを殺す人間が、最大の天敵であるということは納得だ。最後に、ゴキブリが嫌うという噂のレモンについても聞いてみた。
「ゴキブリの体に、度数の高いアルコールや埃がまとわりつくと、気門がふさがれて窒息します。また、刺激臭も嫌う傾向にあります。従って、ハーブや唐辛子などでも、近寄りにくくなるかもしれません。ただし、慣れてしまうと平気になるようです。レモンなどの柑橘類の皮に含まれているd―リモネンという成分は、ゴキブリに有害という話もありますが、死に至るほどではないようです」(佐藤さん)
レモンなどの柑橘類の臭いは苦手なようだが、それでも適応してしまうという。恐ろしい適応能力である。ただ、埃が苦手という意外にデリケートな一面もあるとのこと。
「ピレスロイドなどの殺虫剤は、臭いを嫌うので近寄りにくくなります。殺虫成分が皮膚や口から入ると神経が麻痺しますが、仮死状態の場合も多いので、殺虫剤を使用した時は、必ずひっくり返ったゴキブリを処分しましょう。仮死状態から生き返って、逃げてしまうことも多いです」(佐藤さん)
ピレスロイドとは天然成分である菊酸由来の殺虫剤だ。しかし殺虫剤をかけてもよみがえることがあるとは、油断大敵である。とにかく対応力があるので、麻痺している間に処分するとよいだろう。