オウム真理教による1995年の東京都庁爆発物事件で殺人未遂ほう助罪に問われた元信者、菊地直子被告(46)の上告審で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は25日付で検察側の上告を棄却する決定を出した。裁判員裁判で懲役5年とした1審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した2審・東京高裁判決(2015年11月)が確定する。事件発生から17年間逃走を続けた元信者の刑事裁判は、「罪の認識が認められない」との司法判断で終結する。
事件は95年5月に発生。教団元幹部が都知事宛てに送った郵便物が爆発し、開封した都職員が負傷した。菊地元信者は原料の薬品を山梨県から都内のアジトに運んでおり、裁判では、殺傷事件の手助けをする認識があったかが争点となった。
1審・東京地裁判決(14年)は、元幹部らが危険な薬品を製造していたことや、教祖の松本智津夫死刑囚(62)の逮捕を阻止するために薬品を使って活動することを菊地元信者が認識し、「殺傷事件を起こす認識があった」と結論付けた。
小法廷は、こうした判断について「事実認定で飛躍や過剰な推認がある。不合理と言わざるをえず、破棄を免れない」と批判。地裁判決を覆した高裁判決については「地裁判決の事実認定の不合理さを具体的に指摘しておらず問題だが、無罪とした結論は是認できる」と指摘した。裁判官5人全員一致の意見。
菊地元信者は殺人未遂と爆発物取締罰則違反のほう助罪で起訴され、裁判では薬品を運搬したと認めつつ「爆弾の原料とは知らなかった」と無罪を主張した。