おととし横浜市の病院で点滴の薬剤などに異物が混入され入院患者2人が中毒死した事件で、警察は当時、勤務していた31歳の元看護師の女が点滴に消毒液を入れたと認めたことなどから、死亡した2人のうち1人に対する殺人の疑いで逮捕しました。警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
逮捕されたのは横浜市の元看護師、久保木愛弓容疑者(31)です。横浜市神奈川区の旧「大口病院」では、おととし9月、同じ病室に入院していた西川惣藏さん(当時88)と八巻信雄さん(当時88)が相次いで中毒死しました。
2人の遺体などから、消毒液などに含まれる「界面活性剤」が検出されたたため、警察は、何者かが点滴の薬剤などに消毒液を混入させた殺人事件として捜査していました。
その結果、当時、看護師として勤務していた久保木容疑者が点滴に消毒液を入れたと話したことなどから、2人のうち西川さんに対する殺人の疑いで逮捕しました。
捜査関係者によりますと調べに対し容疑を認めているということで、警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
◆平成29年9月11日
--事件から1年。犯人が捕まらないなか、関係者としてどんな気持ちか
「発覚してからショックを受け続けている。一部のマスコミから私が犯人じゃないかという情報が流れた。その理由が、私が『変わり者』ということらしく、他人の飲み物を飲んじゃったり、なんだかんだと言われたりしている。そんなことはやっていないのに、誰がそんなことを言ったんだろうと思っている。患者さんが病院で殺されてしまうということ自体がショックで悲しかった。それに加えて、私が犯人じゃないかと疑われて…。みんなが自分をそういう目で見ていたのかなと思うとすごくショックだ」
--犯人に対して思うことは
「早く捕まってほしい。事件当初は自首してくれないかなと願っていた。ただ、ここまで自首しないということは、おそらく、今後もすることはないだろうから…」
--事件前後で記憶にあることは
「報道されている通り。ペットボトルに針とか。そういったことがあったときに、病院がすぐに動いていればよかったのにと思う」
--事件前には、病院内でナース服が何者かに切り裂かれたり、看護師の飲料に薬物が混入されたりなど、おかしなことが相次いでいたようだが、看護師間ではどんな話がされていたのか
「立て続けに変なことが起こるので、やはり防犯カメラを付けてほしいと。そしてまず、何かが起きたときにちゃんと警察に入ってもらって、丹念に調べてもらったほうがいいということ。そうじゃないと、『自分たちも仕事をしていて怖いよね』という話が出ていた」
--いまはどんな暮らしを
「仕事はまだしていない。一度、看護師として再就職したが、結局いろいろあって続かなかった。一度看護師から離れようと思って、別の職種で仕事を探している。ただ、なかなか見つからない」
--“容疑者”と疑われ続けている
「精神的につらくて、一応、薬を飲んでいるが、良くならない」
◆同9月12日
--事件前の騒動について、看護師の間では誰が怪しいなどの話は出ていたのか
「内部で誰が、というのはなかった。ただ一度、事務長による関係者の事情聴取が行われたあとに、看護部長から、看護師の一人を名指しで犯人とする報告があった」
--名指しされた看護師はどんな人か。そこから話は進展しなかったのか
「話はそこで終わり。その看護師は、ペットボトル事件の被害者で(殺人)事件が始まる直前に退職した。病院が証拠物を隠してしまったため、警察に対応してもらえなかった。その看護師は『だったら病院で犯人を見つけてくれ』と(病院側に)訴えたが、対応してもらえなかった。それで、『このままじゃ、信用できないから』と言って退職された」
--その看護師はいま何を。そのほかに連絡を取っている看護師はいるのか
「誰とも連絡を取ってはいない」
--ペットボトル事件やナース服切り裂きの事件が公になっているが、それ以外で嫌がらせなど記憶にあることは
「医師のカルテから何枚か、記入済みの紙が抜かれたということがあった。それも含めて何も表沙汰にはならなかった」
--病院に対して思うことは
「管理体制、責任体制のずさんさを感じる。一番初めの事件で、警察を呼んでいたらだいぶ違っていたと思う」
--看護部長とはどんな人か
「スタッフに対する好き嫌いが激しい人だった。好きな子は呼び出してしばらくお話をしたりとか。喫煙所に連れて行って話したりとか。おそらく、白衣切り裂きの犯人と(その看護師を)名指しした理由が、当事者のなかで(看護部長が)ランクを付けたときに一番下…、あんまり好きじゃないからだという話があった。好き嫌いで判断するのは問題だ」
--自身は看護部長にどんな「ランク」をつけられていたと考えているか
「好かれてはいないけれど、かといって特別嫌がらせや、嫌なことを言われていたということはない。あくまで仕事上の、通常の関係だった」
--殺害された八巻信雄さんと西川惣蔵(そうぞう)さんは患者のなかでも特別な存在だったのか
「2人とも事件の1週間ほど前に入院したばかりだったので、あまり接点はなかった。特別注意した方がいいよなどと(上司などから)言われることはなかった」
--2人以外にも不審な亡くなり方をした人はいるか
「変な死に方というより、人数が多い。通常より多いと感じていた。けれど、まさかそんなことになっている(事件性がある)とは思わなかったので。急変なのかな、と自分の中では納得していた」
--在職は1年程度だった
「2年前(平成27年)のゴールデンウイークごろに就職した。事件以降、家の周りをマスコミが包囲してしまって、外に出られない感じだったので、お休みをいただいて、(28年)11月に退職した。「全員解雇」の前に辞めたのでその時の状況は分からない」 --事件直後に辞めた人は
「私は事件直後は2回ぐらいしか病院に行けなかったので、誰がいつ辞めたとか、詳しいことは分からない。ただ、退職のあいさつの時に事務長から聞いた話では、私が辞める前に2、3人辞めているということだった」
おととし横浜市の病院で点滴の薬剤などに異物が混入され入院患者2人が中毒死した事件で、警察は当時、勤務していた31歳の元看護師の女が点滴に消毒液を入れたと認めたことなどから、死亡した2人のうち1人に対する殺人の疑いで逮捕しました。警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
逮捕されたのは横浜市の元看護師、久保木愛弓容疑者(31)です。横浜市神奈川区の旧「大口病院」では、おととし9月、同じ病室に入院していた西川惣藏さん(当時88)と八巻信雄さん(当時88)が相次いで中毒死しました。
2人の遺体などから、消毒液などに含まれる「界面活性剤」が検出されたたため、警察は、何者かが点滴の薬剤などに消毒液を混入させた殺人事件として捜査していました。
その結果、当時、看護師として勤務していた久保木容疑者が点滴に消毒液を入れたと話したことなどから、2人のうち西川さんに対する殺人の疑いで逮捕しました。
捜査関係者によりますと調べに対し容疑を認めているということで、警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
逮捕前 久保木容疑者は
逮捕前、久保木容疑者はNHKの取材に対し、事件当時、病棟で異変が起きていたとしながらも、自身の事件との関わりについては否定していました。
久保木容疑者は、事件から1年となった去年9月、NHKの取材に応じた際、事件前の病棟の状況について「看護師のエプロンが切り裂かれたり、カルテが紛失したり、飲み物に漂白剤が入れられたりと、犯罪のようなことがいろいろ起こっていて、大丈夫だろうかと思っていた」などと話していました。
また、事件については「職員の中でも『最近亡くなる人が多いね』という話はしていたが、まさか事件で亡くなったとは誰も思っていなかったので、ショックだった」と話していました。
そのうえで、事件当初からみずからに疑いの目が向けられていたことに触れ、「いろいろとやってもいないことをやったと言われ、私に目が向けられてすごく辛かった」と話し、自身の事件への関わりを否定していました。
さらに、看護師としての仕事については「療養病棟は寝たきりの人も多く、コミュニケーションがとれない人も多かったが、少しでも快適に過ごしてもらえるようお手伝いをすることが仕事と思ってやっていた」と語っていました。
そして「無差別だったのか患者が気に入らなかったのか全くわからないが、早く犯人を見つけてもらいたいし、なぜそんなことをしたのか知りたい」とも話していました。
久保木容疑者とは
久保木愛弓容疑者(31)は、神奈川県秦野市の県立高校を卒業後、看護の専門学校に通い、10年前に看護師免許を取りました。
別の病院での勤務を経て、3年前の5月に旧「大口病院」に採用されたあとは主に夜勤を担当し、事件が起きたおととし9月は、3日に1回の頻度で夜勤のシフトに入っていました。
同僚だった看護師は久保木容疑者の仕事ぶりについて「まじめに淡々と、任された仕事をこなす印象だった」と話しています。