全国の小中高校などが2017年度に認知したいじめが、前年度比28.2%(9万1235件)増の41万4378件で過去最多となった。文部科学省が25日に公表した問題行動・不登校調査の結果で明らかにした。けんかやふざけ合いをいじめに含めるように改めた16年度に続き大幅な増加となったが、文科省は「積極的な認知が進み、早期の対応につながっている」と肯定的に評価している。
調査は全国の国公私立小中高校や特別支援学校計3万7387校を対象に実施。小学校は同33.7%(7万9865件)増の31万7121件、中学校は同12.8%(9115件)増の8万424件で、いずれも過去最多。高校は同14.9%(1915件)増の1万4789件、特別支援学校は同20.0%(340件)増の2044件だった。
いじめの内容(複数回答)は例年と変わらず「からかいや悪口」が全学校種別平均62.3%(25万7996件)で最も多く、「遊ぶふりをしてたたく、蹴る」が同21.0%(8万7170件)、「仲間はずれ、集団による無視」が同14.1%(5万8290件)と続いた。「パソコンや携帯電話での誹謗(ひぼう)、中傷」は同3.0%(1万2632件)だったが、高校に限ると17.5%(2587件)で2番目に多かった。
いじめ防止対策推進法に基づき、生命や心身、財産に重大な被害が生じた疑いがあったり、長期欠席を余儀なくされたりする「重大事態」と認定された件数も、前年度比78件増の474件で過去最多。自殺した児童・生徒は同5人増の250人で、いじめの問題を抱えていたのは前年度と同じ10人だった。
いじめの認知件数は増加したが、24.5%(9151校)が一件も認知していなかった。
一方、小中高で発生した暴力行為は、前年度比6・5%増の6万3325件で、こちらも過去最多となった。中高で減少したものの小学校が同24.0%増の2万8315件と大幅に増加した。小学校の暴力行為の7割は「生徒間」で、「対教師」や「器物損壊」を大幅に上回った。
いじめ防止対策推進法に基づき、生命や心身、財産に重大な被害が生じた疑いがあったり、長期欠席を余儀なくされたりする「重大事態」と認定された件数も、前年度比78件増の474件で過去最多。自殺した児童・生徒は同5人増の250人で、いじめの問題を抱えていたのは前年度と同じ10人だった。
文科省の調査で確認されたいじめのうち、「パソコンや携帯などでの誹謗・中傷」とされた例は、26年度調査の7898件にはじまり、27年度9187件、28年度1万779件、29年度1万2632件と、年々増加している。
文科省担当者によると、数年前から増えている典型的ないじめが、「ライン外し」と「既読スルー」だ。
友達グループでつくる無料通話アプリ「LINE(ライン)」から特定の人物がブロック(強制排除)されたり、その人物が書き込むとそれまでのやりとりが止まり、無視されるというもので、「学校現場でも『ライン外し』などを注意し、指導に務めているが、なかなかなくならない」(児童生徒課)という。
いじめ相談などに取り組んでいるITサービス会社「ストップイットジャパン」(東京都中央区)によれば、最近はSNSのプロフィール欄を悪用し、仲間への誹謗、中傷をグループ以外にも広げるような事例もみられる。同社の谷山大三郎代表は「いじめの様態が巧妙化し、教師や保護者らが発見しにくくなっている。実際のネットいじめは、文科省調査の何倍もあるだろう」と警戒する。
ネットいじめは、学校現場などで把握しにくく問題が深刻化することがある。28年11月に新潟市で自殺した高校1年の男子生徒は、不愉快なあだ名と関連する合成画像をSNS上でやりとりされるなどしていた。埼玉県で昨年11月、自宅で死亡していた小学6年の女子児童も、直前にSNSで自殺に追い込まれるようなやりとりを同級生としていたとされる。
ネットいじめを研究している加納寛子山形大准教授は、「SNS上の仲間外れや既読・未読無視がネットいじめの中心だが、文科省の現行調査では分類して聞いておらず、いじめの質的な変化が捉えられない。『いいね』ボタンを押してほしいという承認要求が加害者側の動機になることも多く、現代のいじめの実態を把握できる方法に改めるべきだ」としている。