千葉県印西市の老人ホーム職員ら男女6人が昨年、交通事故などで死傷した睡眠導入剤混入事件で、殺人などの罪に問われた元職員の准看護師、波田野愛子被告(72)の裁判員裁判の判決公判が4日、千葉地裁で開かれ、坂田威一郎裁判長は懲役24年を言い渡した。公判で検察側は懲役30年を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めていた。被告の殺意の有無が争われ、被告が睡眠剤の影響や危険性をどの程度認識していたかが焦点だった。
坂田裁判長は判決理由で、交通事故死した同僚の山岡恵子さん=当時(60)=らが睡眠剤の影響で意識障害が生じていることを認識した上で、あえて車で運転するよう仕向けたことなどから「被害者が死亡を含む交通事故を起こす危険性が高いと認識し、それもやむを得ないという未必の殺意があった」と殺意を認定し、殺人や殺人未遂の罪が成立すると判断。准看護師として「信頼を裏切る悪質な犯行」と非難した。
判決によると、昨年2月5日、同僚の山岡さんに睡眠剤入りの飲み物を飲ませ、物損事故の後、交通事故で死亡するかもしれないと認識しながら、あえて運転を止めないことで事故を起こさせ、山岡さんら男女2人を殺傷。同僚女性(71)夫婦も同様の方法で同5月に交通事故に遭わせた。別の同僚女性(39)にも同6月、睡眠剤を入れた飲み物を飲ませ、意識障害を伴う急性薬物中毒にさせた。
公判で波田野被告は睡眠剤混入は認めたが、「嫌がらせだった」「殺すつもりはなかった」と一貫して殺意を否認。弁護側も「(被害者ら)が覚醒する前提で、交通事故まで予測しなかった」と訴えていた。