神奈川県大井町の東名高速道路で「あおり運転」を受けた車の夫婦が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた無職石橋和歩被告(26)の裁判員裁判の論告求刑公判が10日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であり、検察側は「安心安全な自動車社会の実現のためにも、被告の行為は決して許されない」と述べ、懲役23年を求刑した。
同罪の上限は懲役20年だが、合わせて起訴した暴行罪なども含め求刑した。同被告は起訴内容を大筋で認める一方、弁護側は危険運転致死傷罪と予備的訴因の監禁致死傷罪は成立しないと主張。午後に最終弁論を行い結審する。判決は14日。
論告に先立つ意見陳述で、亡くなった夫の母(78)は「何という罪になっても、遺族には殺されたとしか思えない」と涙をぬぐいながら話し、妻の父(73)は「夫婦の命の重みに見合うぐらい長い時間、刑務所に入れてほしい」と述べた。
検察側は論告で、被告が高速道路上に車を止めたことは、危険運転致死傷罪の「重大な交通の危険を生じさせる速度での運転」に当たると指摘。停止行為が同罪の構成要件でないとしても、あおり運転が夫婦の車を停止させ、一家の死傷という結果を生じさせたと因果関係を主張した。監禁致死傷罪についても、被告は自身の車で夫婦の車の前進を不可能にし、夫への暴行で再発進も困難にしており、成立するとした。
弁護側はこれまでに、危険運転致死傷罪は走行中の行為を前提としていると主張。暴行で足止めした時間が約2分であることなどから、監禁に当たらないとして、両罪の無罪を主張している。
起訴状によると、石橋被告は昨年6月5日夜、東名下り線のパーキングエリアで、静岡市清水区の自営業萩山嘉久さん=当時(45)=に駐車方法を非難されたことに憤慨。時速約100キロで萩山さん一家が乗った車を追い抜き、車線変更して進路をふさぐなどの運転を繰り返し、追い越し車線上に停車させて追突事故を誘発、萩山さんと妻友香さん=同(39)=を死亡させたほか、娘2人にもけがをさせたとされる。