国の児童相談所(児相)が2016年度に対応した児童虐待の件数は12万2578件で、前年度より1万9292件(18・7%)増えた。統計を取り始めた1990年度から26年連続で過去最多を更新。厚生労働省が17日に速報値を発表した。15年度中に虐待で亡くなった子どもは84人いたとの死亡事例の検証結果も公表。無理心中を除くと前年度より8人多い52人だった。
虐待件数は、住民や警察などからの通報や相談を受けた児相が、18歳未満の子どもへの虐待と判断して対応したものをまとめた。2割ほどの高い増加率は3年連続だ。厚労省は、子どもの目の前で親が配偶者に暴力をふるう「面前DV」を警察が積極的に通告するようになったことや、社会の意識の高まりによる通告の増加が背景にあるとみる。15年7月に導入した24時間対応の共通ダイヤル「189」からの通報も多い。
虐待の種類別だと、暴言や脅しなどで面前DVも含む「心理的虐待」が6万3187件で最も多く、前年度より1万4千件以上増えて全体の51・5%を占めた。殴る・蹴るといった「身体的虐待」は3万1927件、食事を与えないなどの「ネグレクト(育児放棄)」が2万5842件、「性的虐待」は1622件ですべて前年度より増えた。
DV(ドメスティック・バイオレンス)の中でも、親が子どもの目の前で配偶者や親族らに暴力をふるうこと。
児童への心理的虐待として認知されている。
日本小児科学会は8日までに、虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子どもが全国で年間約350人に上るとの推計を初めてまとめた。東京都や群馬県など4自治体分のデータ分析に基づく試算だが、厚生労働省の平成23〜25年度の集計では年69〜99人(無理心中も含む)で推移しており3〜5倍になっている。
調査は、学会の「子どもの死亡登録・検証委員会」が担当した。委員会所属の小児科医が働いている群馬県と東京都、京都府、北九州市の4自治体で、23年に死亡した15歳未満の子ども(東京都は5歳未満のみ)368人を分析。医療機関の協力を得て死亡事例を検証し、一部は担当医らへの聞き取りもした。
その結果、7・3%に当たる27人は「虐待が死亡の原因だった可能性がある」と判定。(1)激しく揺さぶられ脳を損傷する「乳幼児揺さぶられ症候群」(2)子どもだけでの入浴による溺死など保護者が監督を怠った事例(3)適切な治療を受けさせない「医療ネグレクト」−などが確認された。
国のデータから全国で1年間に亡くなる子どもを約5千人と想定し、4自治体の割合を全国規模に換算すると、虐待死の可能性があるのは約350人になるとしている。